精読と音読の違い:どちらを先にやる?
英語の勉強法を調べると、「精読が大事」という意見と「音読が大事」という意見の両方が出てきます。どちらが正しいというより、2つは役割の違う練習で、順番に組み合わせると力がつきやすくなります。この記事では、その違いと順番、つなぎ方を説明します。
結論:先に精読、そのあと音読。スラッシュはその2つをつなぐ道具。
- 精読は、1文ずつ構造(主語・動詞・修飾のかかり方)を確かめて、正確に意味を取る練習です。
- 音読は、意味がわかった英文を、前から順に速く処理できるようにする練習です。
- 精読で確かめた構造を、スラッシュの区切りとして英文に残し、その区切りで音読すると、2つの練習がつながります。
精読と音読は何が違うのか
| 精読 | 音読 | |
|---|---|---|
| 目的 | 文の構造を確かめ、正確に意味を取る | 理解した英文を、前から順に速く処理できるようにする |
| 速さ | ゆっくり。1文に時間をかけてよい | ある程度の速さで、止まらずに読む |
| やること | 主語・動詞を見つける、修飾のかかり方を確かめる、訳す | 声に出す、区切りで間をとる、文末で声を下げる |
| 使う英文 | 難しめの1文〜数文 | 意味がわかった段落(100〜200語程度) |
| 身につくもの | 構文を見抜く力、正確さ | 前から読む処理の慣れ、読むときの滑らかさ |
たとえば、次の文を精読すると「主語は The fact から transport まで」「that 以下は The fact の中身を説明する同格の節」「動詞は is(is not widely known)」と構造を確かめることになります。
The fact / that the river was once used for transport / is not widely known.その事実は/その川がかつて輸送に使われていたという/あまり広く知られていない
精読でこの構造がわかったら、音読では同じ文を、区切りごとに意味を受け取りながら止まらずに読めるようにします。精読が「わかる」段階、音読が「すぐわかる」段階を作る練習、と考えるとイメージしやすいと思います。
どちらを先にやるか
精読が先です。意味がわからない英文を音読しても、文字を音に変えるだけになりやすいからです。日本の大学生を対象にした実験では、意味のまとまりを無視して区切った文章が、中級の読み手の理解と読みの滑らかさを下げたと報告されています(Yamashita & Ichikawa, 2010)。どこで区切るかを正しく決めるには、文の構造がわかっている必要があります。
一方で、精読だけを続けると、1文ずつは正確に読めるのに、長文になると時間が足りない、という状態になりがちです。精読で正確さを作り、音読で速さと慣れを作る、という順番で両方をやるのがおすすめです。
ただし、これは厳密な「段階」ではありません。精読がまだ完璧でなくても、意味がわかった英文から音読を始めて構いません。精読の練習と音読の練習を、同じ日に組み合わせるのが現実的です。
スラッシュで精読と音読をつなぐ
精読で確かめた構造は、そのままにしておくと次の日には忘れてしまいます。そこで、構造の切れ目をスラッシュとして英文に書き込んでおき、その区切りで音読します。
- 精読:主語・動詞・修飾のかかり方を確かめる。
- 区切る:節の切れ目、長い主語の後、前置詞句や不定詞の前など、意味のまとまりの境目にスラッシュを入れる。
- 区切りあり音読:1区切りずつ、前から意味を取りながら読む。
- 区切りを外す:大きな区切りだけ、区切りなし、と減らしていき、普通の英文で同じまとまりで読めるかを確かめる。
精読の結果をスラッシュに残すことで、「構造がわかった」という理解を、「前から読める」という処理に変えていけます。区切る場所の目安は「スラッシュリーディングとは?区切る場所のルールと例文」に、区切りの外し方は「スラッシュリーディングの卒業:区切りを外していく練習法」にまとめています。
長文全体に手でスラッシュを引くのは大変なので、スラ読オン読のアプリで英文に区切りを自動で入れ、精読で確かめた構造とずれている所だけを直す、という使い方もできます。自動の区切りは提案なので、構造の切れ目と違う場所は、語と語のすき間をクリックして直してください。
英文解釈の参考書の例文を音読に回す
英文解釈の参考書は、1つの例文で1つの構文を詳しく解説していることが多く、精読の練習に向いています。せっかく構造を理解した例文は、音読にも使いましょう。
- 解説を読んだその日に:例文を区切りありで2回、区切りなしで1回音読します。1文なので数分で終わります。
- 数日後に:例文を見て、構造の説明を思い出せるか確かめ、区切りなしで読みます。すっと読めれば次へ。
- 章の終わりに:その章で扱った例文をまとめて音読します。同じ構文が続くので、構文の型が体に入りやすくなります。
次の2文は、どちらも「長い主語+動詞」の形です(自作の例文です)。構文の型が同じ文を続けて音読すると、主語の終わりを見つける感覚がつかみやすくなります。
What matters most / is not how fast you read / but how much you understand.最も大事なのは/どれほど速く読むかではなく/どれだけ理解するかだ
Whether the plan will succeed / depends on the support / of local people.その計画が成功するかどうかは/支援しだいだ/地元の人々の
なお、参考書の例文だけだと文脈がないので、段落の中で意味のまとまりを追う練習にはなりにくい面があります。参考書の例文で構文の型を固め、過去問の長文の段落で前から読む練習をする、と使い分けるのがおすすめです。
時期ごとのバランス
あくまで一例ですが、受験までの時期によって、精読と音読の比重を変えると効率よく進められます。
| 時期 | 精読 | 音読 |
|---|---|---|
| 文法・構文の基礎を固める時期 | 多め。参考書で構文を1つずつ | 精読した例文を短く |
| 長文に取り組み始める時期 | 読めなかった文だけ | 長文の段落を区切りありで |
| 過去問演習の時期 | 復習で読めなかった3〜5文だけ | 解いた長文の段落を区切りあり→なしで |
過去問演習の時期の復習の手順は「英語長文の復習方法:過去問を解きっぱなしにしない手順」で説明しています。
よくある失敗
精読で全部の文を訳そうとする
長文の全文を1文ずつ和訳していると、時間がいくらあっても足りません。精読するのは、読めなかった文や、構造が複雑な文に絞りましょう。
音読しながら日本語の訳を頭の中で作る
音読の目的は、英語の語順のまま前から理解することです。区切りごとに日本語に置き換えるのは最初のうちは仕方ありませんが、慣れてきたら、日本語にしなくても意味が浮かぶ状態を目指します。訳を見るのは意味を確認する段階までにして、音読中は英文だけを見るようにしてください。
どちらか一方だけになる
「精読派」「音読派」のどちらかに決めてしまう必要はありません。精読だけでは速さが、音読だけでは正確さが不足しがちです。音読の効果が感じられないときの原因は「英語の音読は意味ない?効果が出ない人の5つの原因」で整理しています。
まとめ
- 精読は構造を確かめて正確に意味を取る練習、音読は理解した英文を前から速く処理する練習。
- 順番は精読が先。意味のまとまりを無視した区切りは理解を下げるという報告もあり、構造がわかってから区切って音読する。
- 精読で確かめた構造をスラッシュとして残し、区切りあり→なしで音読すると、2つの練習がつながる。
- 英文解釈の参考書の例文は、解説を読んだ日と数日後に短く音読する。長文の段落と使い分ける。
参考文献
- Yamashita, J., & Ichikawa, S. (2010). Examining reading fluency in a foreign language: Effects of text segmentation on L2 readers. Reading in a Foreign Language, 22(2), 263–283. ERIC(PDF)