英語長文を読むのが遅い原因と、速く読むための練習(返り読みを減らす)
「長文を読むのが遅くて、試験時間が足りない」。受験生の悩みでとても多いものの一つです。ただ、読むのが遅い原因は人によって違い、原因に合わない練習をしても速くなりません。この記事では、まず原因を切り分け、そのうえで返り読みを減らして前から読むための練習を中心に説明します。
結論:遅さの原因を5つに分けて、自分に当てはまるものから対策する。
- 知らない単語が多い、文法があいまい、という場合は、速読の練習より先に語彙と文法を補います。
- 単語も文法もわかるのに遅い場合は、返り読みや読み直しが原因のことが多く、スラッシュリーディングと音読が助けになります。
- 速くするための練習は、意味がわかる英文で行い、最後は時間を計って初見の英文で確かめます。
まず、自分の速さを測る
「遅い」と感じていても、どれくらい遅いのかがわからなければ、練習の効果も確かめられません。過去問や問題集の長文を1つ選び、次のように測ってみてください。
- 英文の語数を数えます(問題集に書いてあることもあります。なければ、1行の語数×行数でおおよその数を出します)。
- 時間を計りながら、普段どおりに1回黙読します。設問は解かずに、内容を理解することだけに集中します。
- 語数÷かかった分数で、1分あたりの語数を出します。
- 読み終えたら、本文を見ずに要旨を日本語で1〜2文書きます。
大事なのは、速さと理解をセットで記録することです。速くても内容がつかめていなければ、読めたとはいえません。この記録は、練習を始めて数週間後に別の初見の英文で同じように測り、比べるために使います。
遅さの原因を5つに切り分ける
| 原因 | よくある様子 | まずやること |
|---|---|---|
| 語彙 | 知らない単語が出るたびに止まる | 単語の学習。長文の中で出会った語も覚える |
| 文法・構文 | 主語や動詞がどれかわからず、何度も読み直す | 文法の確認と、読めなかった文の精読 |
| 返り読み | 文の最後まで読んでから日本語の語順に並べ替える | スラッシュリーディングと音読(この記事の中心) |
| 読み直し | 読み終えた段落の内容が頭に残らず、戻って読み直す | 段落ごとに要点を一言で言う練習 |
| 設問の処理 | 英文は読めるが、選択肢と本文を何度も見比べる | 設問の解き方の練習、根拠の探し方の復習 |
判断のしかたは、解き終えた長文で、止まった所・読み直した所に印をつけてみることです。印の多くが知らない語のところなら語彙、構造がつかめない文なら文法・構文が中心の原因です。どちらでもないのに遅い場合は、返り読みや読み直しを疑ってみてください。
語彙と文法が足りないときに速読の練習をしても、わからない所を速く通り過ぎるだけになります。まずはそちらを補うのが近道です。精読と音読の役割分担は「精読と音読の違い:どちらを先にやる?」で説明しています。
返り読みとは何か
返り読みとは、英文を最後まで読んでから、後ろから前へ戻って日本語の語順に組み立て直す読み方です。英文和訳の練習では自然なやり方ですが、長文を読むときにこれを毎文やると、同じ箇所を目で何度も往復することになり、時間がかかります。
Scientists are studying / how some plants survive / in places / where it rarely rains.科学者たちは研究している/一部の植物がどのように生き延びるのかを/場所で/めったに雨が降らない
返り読みをすると「めったに雨が降らない場所で一部の植物がどのように生き延びるのかを、科学者たちは研究している」と、最後から組み立て直すことになります。前から読む場合は、区切りごとに「科学者が研究している→何を?植物がどう生き延びるか→どこで?場所で→どんな場所?めったに雨が降らない」と、英語の順番のまま情報を受け取っていきます。日本語としては不自然でも、意味は取れています。
返り読みを減らす練習
ステップ1:スラッシュで区切って、前から意味を取る
意味がわかった英文に、意味のまとまりでスラッシュを入れ、区切りごとに前から意味を取る練習をします。最初は区切りごとに日本語を思い浮かべても構いません。区切る場所の目安は「スラッシュリーディングとは?区切る場所のルールと例文」にまとめています。
手で長文全体に区切りを入れるのは大変なので、スラ読オン読のアプリで英文に自動で区切りを入れることもできます。過去問のPDFや、貼り付けた英文に対応しています。
ステップ2:区切りありで音読する
区切りを入れた英文を声に出して読みます。音読は、目だけで読むときと違って、途中で前に戻ることができません。そのため、前から順に意味を取る読み方を強制的に練習できます。区切りで短く間をとり、文末で声を下げることを意識してください。
ステップ3:区切りを減らしていく
区切りありで読めるようになったら、大きな区切りだけ、区切りなし、と段階的に減らします。スラッシュがなくても頭の中で同じまとまりで意味が取れていれば、練習が身についてきたサインです。進め方は「スラッシュリーディングの卒業:区切りを外していく練習法」で説明しています。
ステップ4:時間を計って初見の英文を読む
最後に、初めて読む英文を時間を計って黙読し、最初に測った記録と比べます。練習した英文が速く読めるようになっても、初見の英文が速く読めるようになったとは限りません。週に1〜2回は初見の英文で確かめましょう。
読み直しが多い人の練習
読み終えた段落の内容が頭に残らない人は、段落を読み終えるたびに、内容を一言でまとめる練習を加えます。「筆者は〜に反対」「〜の具体例」「前の段落の理由」のように、短くて構いません。段落の役割がつかめると、全体の流れの中で今どこを読んでいるかがわかり、戻って読み直す回数が減ります。
研究からいえること・いえないこと
- 区切りの位置は大事:日本の大学生48名の実験で、意味のまとまりを無視して区切った文章は、中級の読み手の理解と読みの滑らかさを下げました(Yamashita & Ichikawa, 2010)。ただし、意味で区切った場合に理解が上がる効果ははっきりしませんでした。
- チャンク単位の音読で速さが伸びた研究がある:日本の大学生55名を対象にした Shimono(2018)では、時間を計った黙読と、スラッシュの入った文章でのチャンク単位の模倣音読などを1学期続けた群で、理解を保ったまま読む速さが伸びました。一方、時間を計って読む練習だけをした群との差ははっきりせず、「音読だけが特別に効く」とまではいえません。
- 初見の英文への広がりは控えめに見る:反復読みの研究では、効果は練習した文章で大きく、初めて読む文章への広がりは小さめという結果が多く報告されています(Therrien, 2004)。英語学習者の小規模な研究では、練習していない文章でも速さが伸びたという報告もあります(Chang & Millett, 2013)。
まとめると、意味のまとまりで区切って前から読む練習は、読む速さを伸ばす方法の一つとして根拠がありますが、これだけで劇的に速くなると約束できるものではありません。語彙・文法・初見の英文を読む練習と組み合わせることが前提です。研究の詳しい紹介は「英語の音読は効果ある?研究でわかっていること・いないこと」にあります。
速読の練習はいつから始めるか
「速読の練習はいつから?」という質問には、時期より状態で決めると答えています。目安は、高校で習う文法をひととおり学び、長文の中の知らない単語が1段落に1〜2個程度になったころです。その前の段階では、速く読む練習より、単語と文法と精読に時間を使うほうが効率的だと思います。
ただし、スラッシュで区切って前から読む練習は、文法を学んでいる途中でも、易しめの英文を使えば始められます。教科書や易しめの問題集の英文で前から読む感覚に慣れておくと、本格的に長文に取り組むときに楽になります。共通テストを受ける人は、時間配分の考え方も「共通テスト英語リーディングの時間配分と「時間が足りない」の対策」で確認しておいてください。
まとめ
- まず、語数÷分で自分の速さを測り、理解とセットで記録する。
- 遅さの原因を、語彙・文法・返り読み・読み直し・設問の処理に分ける。語彙と文法が足りないときはそちらが先。
- 返り読みには、スラッシュで区切って前から読む→区切りありで音読→区切りを減らす→初見の英文で確かめる、の順で取り組む。
- 研究では、区切りは意味のまとまりに置くことが前提。チャンク単位の音読で速さが伸びた研究はあるが、効果は控えめに見ておく。
参考文献
- Chang, A. C.-S., & Millett, S. (2013). Improving reading rates and comprehension through timed repeated reading. Reading in a Foreign Language, 25(2), 126–148. 掲載ページ
- Shimono, T. (2018). L2 reading fluency progression using timed reading and repeated oral reading. Reading in a Foreign Language, 30(1), 152–179. ERIC(PDF)
- Therrien, W. J. (2004). Fluency and comprehension gains as a result of repeated reading: A meta-analysis. Remedial and Special Education, 25(4), 252–261. 要旨(ASHA Evidence Maps)
- Yamashita, J., & Ichikawa, S. (2010). Examining reading fluency in a foreign language: Effects of text segmentation on L2 readers. Reading in a Foreign Language, 22(2), 263–283. ERIC(PDF)