英語長文の音読は何回やればいい?回数より大事な「やめどき」
「音読は30回」「いや100回」と、回数の話はよく聞きます。でも、同じ英文を何十回も読んでいるうちに、途中から頭が働かなくなった経験はないでしょうか。この記事では、研究で目安とされている回数を確かめたうえで、回数ではなく「ここまでできたら次へ進む」という到達基準で音読を区切る方法を説明します。
結論:1回の練習で声に出して通読するのは4回前後、あとは数日あけて読み直す。
- 反復読みの研究では、1回の練習で同じ文章を読む回数は4回程度までが目安とされています。それ以上を一気に重ねるより、日をあけて読み直すほうが無駄が少ないと考えています。
- 回数より「意味が浮かぶ」「つかえない」「まとまりで読める」の3つがそろったかで、やめどきを決めます。
- 同じ英文の合計回数は、1日目の4回前後+数日後に1〜2回+必要なら1〜2週間後にもう一度、くらいが一つの目安です。決まった正解の回数はありません。
「何回」が気になる理由と、回数で決める落とし穴
回数の目標は、わかりやすくて続けやすいのが長所です。「今日は10回読んだ」と数えられると、勉強した実感が持てます。ただし、回数だけを目標にすると、次のようなことが起こりがちです。
- 後半が作業になる:15回目あたりから、意味を考えずに口だけが動いている。
- 覚えた英文を「読めた」と勘違いする:暗唱に近い状態になると、文字を見なくても口が動くので、読む力がついたかどうかがわからなくなる。
- 1つの英文に時間を使いすぎる:入試では毎回初めての英文を読むので、同じ英文だけを何十回も読むと、初見の英文に触れる時間が減る。
大事なのは、音読の1回1回に「今回は何を確かめるか」という目的があることです。目的を果たしたら、それ以上同じ読み方を重ねても伸びは小さくなります。
研究でいわれている回数の目安
反復読み:1回の練習で4回程度まで
英語を母語とする子どもを対象にした反復読み(同じ文章を何度か読む練習)の研究をまとめた Therrien と Kubina(2006)は、1回の練習で同じ文章を読む回数は4回程度までが目安だとしています。あわせて、お手本の読みを聞くこと、読み方へのフィードバック、目標を決めて読むことが効果を高める要素として挙げられています。何十回も読むより、条件を整えた数回のほうがよい、という考え方です。
また、反復読みの18の研究をまとめた Therrien(2004)のメタ分析では、効果の多くは練習した文章そのもので測られていて、初めて読む文章への広がり(転移)はそれより小さいと報告されています。同じ英文を読む回数を増やすほど、その英文はうまく読めるようになりますが、入試の初見の英文が読めるようになる効果は控えめに見ておくほうが正確です。
シャドーイング:1つの素材で4〜5回という報告
音読とは少し違う練習ですが、音声を聞きながらすぐ後を追って声に出すシャドーイングでも、回数が調べられています。日本の大学生30名を対象にした Hashizaki ほか(2025)は、先行研究の整理として、1つの素材につき4〜5回の練習で正しく言えた割合が頭打ちになるという報告があることを紹介しています。一方で、この研究自体では、授業内外でより多く繰り返した学習者のほうが、リスニングや連語の知識のテストで高い得点だったという結果も出ていて、最適な回数は「何を伸ばしたいか」によって違う、とまとめています。
研究からいえること・いえないこと
まとめると、「1回の練習なら4回前後」という目安には一定の根拠がある一方で、日本の高校生が入試長文を音読するときの最適な回数は、研究ではっきりしていません。研究の対象者が英語を母語とする子どもや大学生であることも含めて、目安は目安として使い、あとは自分の状態を見て決めるのが現実的です。研究の詳しい紹介は「英語の音読は効果ある?研究でわかっていること・いないこと」にまとめています。
段階ごとの回数の目安
このサイトのアプリでは、1つの段落を次のような段階で読んでいきます。回数は研究の目安をもとにした設計上の判断で、研究がこの手順そのものを確かめたわけではありません。
| 段階 | 回数の目安 | その回で確かめること |
|---|---|---|
| 初見で黙読 | 1回 | 今の自分がどこまで読めるか(時間と要点のメモ) |
| 意味の確認 | (回数なし) | わからない語・構文を辞書と解説で解決する |
| お手本を聞きながら目で追う | 1〜2回 | 区切る場所、声を下げる場所、知らない語の発音 |
| 区切りあり音読 | 2回 | 1区切りごとに、前から意味を取れるか |
| 大きな区切りだけ/区切りなし | 1〜2回 | 区切りが見えなくても同じまとまりで読めるか |
| 数日後の読み直し | 1〜2回 | 区切りなしで意味がすぐ浮かぶか |
声に出して通読するのは、1日目で4回前後です。たとえば次の文を区切りありで2回読むとき、1回目は「意味を取りながらゆっくり」、2回目は「区切りで短く間をとって、文末で声を下げる」と、回ごとに見るところを変えると、同じ回数でも中身が濃くなります。
Some people believe / that talent matters most, / but steady practice / often makes a bigger difference.信じている人もいる/才能がいちばん大事だと/しかし地道な練習のほうが/大きな違いを生むことが多い
手順の細かい進め方は「英語長文の音読のやり方:1日の手順と復習」で説明しています。
やめどきの3つのサイン
回数の目安を超えていなくても、超えていても、次の3つがそろったらその日の音読はやめて構いません。どれか1つでも欠けていれば、欠けているところだけを練習します。
1. 意味が先に浮かぶ
区切りなしで読んだとき、日本語に直さなくても内容が頭に入ってくる状態です。読み終えたあと、本文を見ずに要旨を1〜2文で言えるかで確かめます。言えなければ、まだ意味の確認が足りていません。回数を足す前に、つかめていない文を辞書や解説で見直してください。
2. つかえない
読み間違い・読み飛ばし・言い直しがほとんどない状態です。同じ場所で何度もつかえるなら、その原因が「発音がわからない語」なのか「文の構造がつかめていない」のかを分けます。前者はお手本でその語だけ確認し、後者は意味の確認に戻ります。全文を最初から読み直すより、つかえた区切りだけを2〜3回読むほうが早く直ります。
3. まとまりで読める
意味の切れ目で短く間がとれ、文の終わりで声が下がっている状態です。次の文なら、「when 以下」の前で一度切れていれば、条件と結果を分けて読めているサインです。
The plan seemed simple at first, / but it became complicated / when more people joined the project.その計画は最初は単純に思えた/しかし複雑になった/より多くの人がその事業に加わると
3つの観点で振り返る方法は「英語音読の自己チェック法:録音で確かめる3つの観点」に書きました。録音して聞き返すと、自分では気づきにくい読み飛ばしや、単語ごとに切れてしまう読み方がわかります。
逆に「やめたほうがいい」サイン
- 英文を見なくても口が動く(覚えてしまっている)
- 読みながら別のことを考えている
- 声がかすれる、眠くなる
こうなったら、その英文の今日の練習は十分です。続けても伸びにくいので、別の段落か、初見の英文の黙読に切り替えましょう。
何日あけて読み直すか
1日目に4回前後読んだ英文は、2〜4日ほどあけて区切りなしで1〜2回読み直すのがおすすめです。少し時間がたってから読むと、1日目には「慣れ」で読めていた部分と、本当に理解できている部分の違いがはっきりします。意味がすぐ浮かばない文があれば、そこだけ区切りありの表示に戻して確認します。
さらに1〜2週間後にもう一度読んで、3つのサインがそろっていれば、その英文は「卒業」でよいと考えています。この間隔は経験的な目安で、研究で決まった最適な日数ではありません。模試や課題で予定が詰まっているなら、1日ずれても気にしなくて大丈夫です。
こうして数えると、1つの英文を声に出して読む合計は、多くても10回前後になります。「30回」「100回」と比べると少なく感じるかもしれませんが、そのぶん新しい英文に使える時間が増えます。入試で出るのは初めて読む英文なので、ときどき初見の英文を黙読して、練習の効果が初見にも広がっているかを確かめてください。
1日の時間配分の例
100〜200語くらいの段落1つなら、1日目の手順はおよそ20〜30分です。毎日の勉強時間に合わせて、たとえば次のように組めます。あくまで一例です。
| 使える時間 | 内容 |
|---|---|
| 15分 | 前に練習した段落の読み直し(区切りなし1〜2回)+自己チェック |
| 30分 | 新しい段落1つを1日目の手順で(黙読→意味の確認→お手本→区切りあり2回→区切りなし) |
| 45分 | 新しい段落1つ+前の段落の読み直し+初見の英文を1つ黙読 |
音読は1日に長時間まとめてやるより、短くても毎日続けるほうが、読み直しの間隔を作りやすくなります。過去問を解いた日は、その長文から段落を1つ選んで音読に回すと、復習と音読を一度に済ませられます。
よくある疑問
「30回読め」と言われたけれど、少なすぎない?
回数を多く勧める人の多くは、何日かに分けて読むことを前提にしていたり、暗唱できるまで読むことを目的にしていたりします。目的が違えば回数も変わります。入試の長文を速く正確に読むことが目的なら、1日に何十回も読むより、1日目は4回前後で区切り、日をあけて読み直すほうが、意味を考えながら読む回数の割合を高く保てると考えています。
同じ英文を暗記するまで読むべき?
暗記を目指す必要はありません。覚えるほど読むと、文字を見て意味を取る練習ではなく、記憶を口に出す練習に近くなります。ただし、気に入った表現や、よく出る言い回しを含む1〜2文を覚えておくのは、英作文などに役立つことがあります。
単語帳の例文やほかの教材でも同じ?
短い例文なら、1回の練習で読む回数は同じ目安で構いません。ただ、長文と違って文脈がないぶん、意味のまとまりを意識しにくいことがあります。長文の段落と組み合わせて使うのがおすすめです。
回数を数えるのが面倒です
回数よりも、段階(区切りあり→大きな区切りだけ→なし)を進めることを目印にすると数えなくて済みます。スラ読オン読のアプリでは表示を切り替えながら段階を進め、仕上げの音読だけ時間と3観点を記録できるので、「どこまで進んだか」が残ります。
まとめ
- 反復読みの研究では、1回の練習で同じ文章を読む回数は4回程度までが目安とされている。ただし入試長文の最適な回数は研究でもはっきりしていない。
- 回数ではなく「意味が浮かぶ」「つかえない」「まとまりで読める」の3つがそろったかで、やめどきを決める。
- 1日目は声に出して4回前後、2〜4日後に1〜2回、必要なら1〜2週間後にもう一度。合計は多くても10回前後。
- 覚えてしまった・集中が切れたら、その英文は切り上げて、新しい英文や初見の黙読に時間を回す。
段階ごとの表示の切り替えと、仕上げの音読の記録はアプリでそのまま試せます。手持ちの過去問PDFを読み込むか、英文を貼り付けるだけで、区切りの入った音読用の英文ができます。
参考文献
- Hashizaki, R., Sekiyama, H., Xing, Y., & Wakita, K. (2025). Exploring the optimal number of repetitions for shadowing: A focus on listening comprehension, memorization of multiword expressions, bottom-up processing, and repetition speed. JALT Journal, 47(1). doi:10.37546/JALTJJ47.1-1
- Therrien, W. J. (2004). Fluency and comprehension gains as a result of repeated reading: A meta-analysis. Remedial and Special Education, 25(4), 252–261. 要旨(ASHA Evidence Maps)
- Therrien, W. J., & Kubina, R. M. (2006). Developing reading fluency with repeated reading. Intervention in School and Clinic, 41(3), 156–160. PDF